- 特定技能
技能実習は廃止?転職可能に?政府発表の中間報告を徹底解説!
技能実習は原則転職不可です。
技能実習生は、日本での技術を母国に持ち帰る技術移転を目的としているため、現在は原則転職不可です。
しかし、政府は4/10に技能実習生を廃止とする方向で検討している発表を行いました。
これまで長く多くの企業様で活用されてきた技能実習制度は今後どうなるのでしょうか?
今回は、技能実習制度や特定技能制度の今後について、政府発表の概要をまじえて解説します。
今後の技能実習制度は転職可能になる?有識者会議とは
今回政府から発表されたのは「技能実習制度及び特定技能制度の在り方に関する有識者会議」の中間報告たたき台です。
※10/18に行われた第12回有識者会議の最新情報はこちらからご覧ください。
「技能実習制度及び特定技能制度の在り方に関する有識者会議」とは、独立行政法人国際協力機構理事長を座長とし、弁護士や社団法人、そして都道府県知事など各方面からの観点で技能実習制度・特定技能制度について議論ができるよう集められています。
本会議は、令和4年12月14日(水)を第1回とし、今回技能実習生の廃止検討の発表がなされた4月10日までに計5回、およそ1ヵ月に1回のペースで開催されています。
また、関係者ヒアリング対象として全国にある技能実習生監理団体やNPO法人、技能実習生の名も挙げられています。
さて、今回の中間報告については、「今後の技能実習制度・特定技能制度の在り方の方向性について一定の結論を得た」とされています。
このことからも、現在の政府発表が中間報告のたたき台であるとはいえ、ある程度の方針やベースとなる今後の技能実習制度の在り方についての考え方は決まってきているのではないでしょうか。
※特定技能2号の業種追加に関する情報はこちらの記事をご覧ください。
技能実習生の制約を緩和していく方針に?
大きな注目点として、技能実習生の作業範囲や転籍の制限の緩和が記載されています。
現状、技能実習生は対象となる職種や作業が明確に定められおり、技能実習生を自社で雇ったからといって、どんな業務でもさせるというわけにはいきません。
技能実習生が受け入れ先企業でどのような技能を習得するかを明確にするため、事前に「実習計画」というものを作成する必要があります。
そんな業務制限の中、技能実習生に任せたい仕事も任せることができていない企業様も多いのではないでしょうか。
これまでの外国人労働者は短期労働、という考え方から一新?
今回の中間報告の中では、外国人労働者の就労ニーズの多様化を受け、 在留の条件は明確化しつつ、長期滞在の道が開かれるべきであると述べられています。
現在の技能実習・特定技能両制度では、技能実習生として3年~5年、特定技能1号として5年の最長8年しか日本での就労が認められていませんでした。
※建設業、造船・舶用工業については、特定技能2号の受け入れが認められており、実質無期限滞在が可能
元は、無期限で就労できる特定技能2号の業種拡大を2022年頃に実施予定とされていましたが、結局上記2業種以外の業種にはいまだ特定技能2号の受け入れは認められていません。
このような経緯もあり、今後は幅広い対象で従来より長期の就労ができるようになる可能性も考えられます。
全国画一的な最低賃金ベースから個別事情に応じた政府補助も視野に
“技能実習生については、各都道府県の最低賃金に合わせているのが実態であるが、地方の中小企業が人材を確保できる環境を整えるには、当初の賃金を全国斉一にすべく、補塡の仕組みを作るなど、制度的な検討が必要ではないか。”
実際に、転職の認められる特定技能生では、高賃金や便利な暮らしを求めて、都市部の求人に人材が集まりやすくなっています。全国的な人手不足解消を目指すのであれば、このような政府補助や制度変更は必須となりそうです。
国際貢献から労働力として正面から認める、へ
また、こちらも大きなポイントとなりそうです。
これまで技能実習制度の目的はあくまで日本で実習した技術を母国に持ち帰る国際貢献とされてきましたが、技能実習生のうち20%程度しか実習修了後、母国への技術還元を行っていないと報告されています。
このような実態にあわせて、日本の人手不足解消を目的としている特定技能制度に包摂していくのが良いのではとされています。
2019年に創設されたばかりの特定技能制度ですが、今後はこちらを主とした法整備や制度整備がされていく可能性もあります。
特定技能制度に対象分野の追加を検討
現在12分野にしか受け入れが認められていない特定技能制度ですが、中間報告の中でコンビニ、鉄鋼などのインフラ関係業種も、対象分野に追加すべきと言及されています。
また、それぞれの分野で全国トータルの受入れ数を設けるのではなく、地域ごとに不足する人材に応じた受入れ数を、その地域の自治体と業界等が話し合った上で設けるべきではないかとされています。
令和4年12月末時点で素形材・産業機械・電気電子情報関連製造業分野では上限31,450名に対し、既に27,725名が受け入れされていましたが、地域ごとの受け入れ数にはかなり差があります。
今回の見直しで、地域ごとの状況についても多方面から検討されていることが分かります。
技能実習制度の転籍制限の緩和
技能実習生の問題点として諸外国からも指摘があった点として、人権侵害にあたらないかという議論です。
原則、転籍不可であることが劣悪な労働環境に置かれた場合でもなかなか抜け出すことができないなど、様々な人権侵害を発生させる可能性のある背景や原因になっているとされています。
また前述のように、技能実習制度の目的を国際貢献ではなく、日本の労働力補填とした場合、なおさら他の在留資格と同様に、転職を禁止する理由がありません。中間報告においても、人権侵害の防止のため、転籍制限の緩和は不可欠と断言しています。
しかし、転職ができないがゆえに、受け入れ企業にとっては生産計画や教育計画も立てやすかったことも事実。
完全に、転籍の制限はなくなるのでしょうか?
人材育成のためにも一定の制約が必要
人権保護のため転籍緩和の必要性がある一方で、一定の制約も必要とされています。
技能実習計画が作成される仕組みの中で完全に自由な転籍を認めるのは人材育成機能を軽減させてしまうとされています。
例えば同職種内でスキルアップのための転籍は認めるなど、転籍制限に関しては特に、技能実習生本人のキャリアアップの観点に重きを置いて検討されていくのではないでしょうか。
よって、分野・職種を超えた本人のスキルアップや人材育成に繋がらない転職は何らかの制限が課される可能性も高いと考えられます。
また中間報告内では、「原則1回に限り、 同一職種の転籍を認めることが考えられる。」とも明記されています。
まとめ
多くの企業で受け入れされてきた技能実習生。
仕事熱心でよく働くイメージがあると同時に様々な課題も議論されてきました。
今回の中間報告で特に重視されているのは「人権保護」と「人材育成」といえるでしょう。
日本の少子高齢化に対応すべく、技能実習生や特定技能など、外国人材の力に頼る必要があるのは当然ですが、彼らに選ばれる国となるように私たちも取り組んでいく必要があります。
日本に働きに来た外国人材が自身のキャリアステップを描き、受け入れ企業や管理団体、登録支援機関、行政がその助けとなるよう今後法改正や制度整備がなされていくでしょう。
G.A.コンサルタンツでは、特定技能人材のご紹介・支援を行っております。
今回の中間発表を機に特定技能人材の採用を検討の方や、今後の外国人雇用についてご相談がありましたら、是非お気軽にお問い合わせください。