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日本一を目指した男

日本一を目指した男

2023年12月に特定技能2号試験合格者3名を輩出した株式会社岸本鉄工所
日本一を目指したチョンさん、彼を支えた人たちの軌跡を追いました。

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日本一を目指した男

 TRAN BINH TRONGさん(以下、TRONGさん)は6年前に株式会社岸本鉄工所の技能実習生第1期生として来日しました。実習満了後は特定技能へ切替え、弊社が支援する3000名以上の特定技能者の中で最も早く特定技能2号になりました。
 出身は、ベトナムのベンチェ省で父は遠洋漁業、母は畜産農家で両親とも忙しくしていました。メコン川で釣りをしたり、ダーカウ(蹴鞠)をして遊ぶ子どもで、幼少期の夢はオートバイレーサーになる事で、昔からバイクや車が大好きでした。

来日して、すぐ迷子

 2018年に、岸本鉄工所に技能実習生としてやってきます。入国し配属される前のこと、同期メンバーと玉掛け講習が終了し監理組合の宿舎へ帰っていました。TRONGさんが代表してタクシーで支払いをしている間に先に降りた他の同期たちは丁度来た電車に飛び乗ってしまい一人ぼっちに。近くにいた日本人に道を教えてもらい、なんとか最寄り駅で同期と合流できました。日本語もまだまだできなかった当時の忘れもしない思い出になりました。

迷いを経て、飛躍へ

 2020年の秋ごろTRONGさんは、技能実習の満了を迎えるにあたり、今後の進路について迷っていました。日本語の習得もまだまだだと感じ、日本に残って溶接の技術を磨いていくか、いっそのことベトナムに帰って仕事をするか悩む日々。しかし日本で仕事を頑張ろうと振り切りそこから特定技能1号、そして2号へと駆け上がって行きました。
 2021年に特定技能1号への切替後は、造船・舶用工業分野では他分野に先駆け特定技能2号の受け皿があり、期間の上限がない在留資格があるなど友人同士から情報をキャッチしており、2号取得で日本一を目指そうと志すようになりました。

恩返しのために

 TRONGさん達3名の1期生が入社し暫くは、会社近くの寮で生活を送る彼らの為に食料品の買い出しに社長が車で送迎するなど、何かと気にかけてフォローをしてくれていました。
 自分が特定技能2号取得で日本一になれば、業界で話題になり注目される事で、会社に良い仕事が増え、良い人材が集まるのでは無いか?まだ社会人になりたての自分たちに、仕事のやり方や技術を一から教えてくれた会社に貢献したい。巡り巡ってそれが、育ててくれたお母さんやお父さんへの恩返しになると考えるように。 岸本社長はそんなTRONGさんの気持ちを聞いて、絶対に日本一の男にさせてやりたい!と気持ちを日々強めていったそうです。社員にも情報を共有し、全社一丸となり彼らの2号取得を応援しました。

 2023年9月に広島県のモデル事業としてバックアップを受けたある企業で特定技能2号試験初の合格者が出た事を、業界紙で知る事になりました。G.A.コンサルタンツの担当者に連絡を入れフォローを改めてお願いしました。その後TRONGさんたちは2号試験会場になる会社に何度も足を運び溶接の練習を重ね、溶接の教本を何冊も読みこんで2023年12月の試験に臨み、同期2名と一緒に見事合格!社長は、日本海事協会から「特定技能2号試験合格証明書」が届き、社員全員で喜び合い証明書を受け取った時の嬉しそうな彼らの顔は忘れる事はないと言います。岸本鉄工所から、3名の特定技能2号者をエリア最速で輩出し、間違いなく弊社が支援する企業のモデルケースとなりました。日本一を目指した2名の男の物語りは、ここからまた紡がれていきます。

目まぐるしい成長

 技能実習を満了し特定技能1号になってからのTRONGさんの成長は目を見張るものがあります。原動機付自転車免許の取得、50CCバイク購入、普通二輪免許の取得、400CCバイク購入、普通自動車免許の取得、自動車2台購入と矢継ぎ早に車両免許を取得しました。更には、JLPT2級合格、特定技能2号取得、彼女との挙式(24年9月28日)と持ち前の実行力で目まぐるしい成長を遂げています。仕事でもリーダーシップを発揮するようになり、後輩の指導や気配りなど人として高みを目指す姿を6年前の入国時に想像できたでしょうか。社長をはじめとする会社のサポート、これまでフォローしてきた組合や弊社担当者との二人三脚無くしては実現しなかったことでしょう。

雨のち晴れ

雨の再会

 2023年10月にG.A.コンサルタンツでカスタマーサクセスを担当する事業推進部マネージャーの髙橋良美さんは、大阪で5年ぶりに岸本社長と再会します。岸本鉄工所は昔自身が担当していた馴染みのある会社。TRONGさんから最速で特定技能2号試験合格を目指すと要望されていたにも関わらず、段取りを上手くつける事ができず、ご迷惑をおかけすることになり、そのお詫びでの再会でした。髙橋さんは率直に謝罪し、そこから顧客担当、コーディネーターTANさんと一緒に特定技能2号試験への準備に奔走しました。試験会場になる企業の連携を進め、まだ開示されている情報が少ない状況の中、日本海事協会へ問合せをしました。TANさんは試験の注意事項や出題傾向の問題を翻訳し、練習問題で間違えた箇所のチェックも一緒にしていきました。また実技試験対策として注意すべき点や溶接中のアドバイスもしつつ、TRONGさんたちと試験当日を迎えました。

 特定技能2号試験は、実技と学科試験があり、TANさんは試験会場に通訳として同行。彼らを見守りました。最終の外観試験と曲げ試験を行い板材を東京へ送り出しました。TRONGさんは、実技を心配している様子でしたが、大丈夫だと励まし帰路につきました。後日、岸本社長から「GAさんのおかげで合格だよ。ありがとう!」と連絡があった時は、事業推進部全員で喜び合いました。この件に向き合えた事で、更なる人材採用や定着で引き続きご支援させて頂いています。

虹を架ける

 海外人材の支援といっても、色々な局面があります。採用や就職サポート、入社後のフォロー、キャリア支援、退職など。十人十色の人材と、海外人材への関わり方もそれぞれ異なる企業様。常に、両者から求められている支援は何かを模索しつつも、期待に応えられず雨がふる時もある。そんな時も真摯に向き合う事で、信頼を取り戻せることができる。G.A.コンサルタンツだからこそ経験できるものは大きい。また各国の政策や法律改正の影響を大きく受けますが、海外人材がフェアな立場であること、帰国しても自立し幸せになること、受入れる企業様の安定や成長に貢献することで我々も共に未来へ歩んでいきたいという想いは創業当時から大切にしています。

ベトナムを訪ねて

家族との交流

 2018年6月、岸本社長はベトナム南部の町ベンチェ省にいました。TRONGさん1期生を受入し半年以上が経過し、2期生受入を念頭にベトナム現地面接会に参加するタイミングでした。面接スケジュールの合間を見て彼らの故郷を訪ねました。

 TRONGさんの父は遠洋漁業の漁師で普段の生活は母と弟と3人暮らしでした。幼少期から仕事と育児をワンオペでこなす母の後姿を見て育ちました。ベトナムの両親は、長男が日本へ行ってさぞ寂しがっているだろうと社長は想像していましたが、実際に話を伺うと仕事で迷惑をかけていないか、弱音を吐いていないかを心配しておりお母さんからは「息子がホームシックになったりしたら、いつでも言ってきてください。私が息子の尻を叩きますから。」と言葉をもらったそうです。いかに彼らが家族や周囲から期待されていて、覚悟を持って日本に働きに来ていのるかを目の当たりにした瞬間でした。そして、改めて大切なお子さんを預かる日本の親として仕事人さらに人としても育て行く覚悟を決め、日本への帰路につきました。

 余談となりますが、家族との食事会の席に遅れて参加した学校帰りのTRONGさんの弟さん。彼も是非働きたいと申し出て、実習生として入国し一緒に働くメンバーとなりました。これぞまさにリファラル採用でした。

答え合わせは後から分かる

 2025年に創業100周年を迎える岸本鉄工所ですが、事業を継続していく上での考え方や、人材定着について岸本社長に伺いました。


 社是として「最大の会社よりも、最良の会社たらん」を掲げており、常にチャレンジする姿勢を大切にしています。働く限り、同じ時間を共有する会社での仕事はとても大切だと考えています。常にモチベートできる環境を作る事が経営者の仕事であり、だからこそより難易度の高い仕事を狙って取りに行っています。価値の高いモノづくりを追求できる人材を育てていきたいとも思っています。
毎日同じ仕事がしたい人は自然と淘汰されていき、より高みを目指したい人間だけが残っていく。その残った社員全員が、「物心両面の幸福」を感じて人生が充実し岸本で働いて良かったと思えてくれたら、ようやく会社として取り組んで来た事が正解だったのかの答え合わせができます。と輝く強い眼差しでお答え頂きました。経営も、人材の育成も長期的な視点で取り組んでいます。岸本鉄工所は大型製缶から機械加工まで一貫生産体制の強みを活かし、医療用機器やエネルギー産業、航空宇宙産業に至るまで、幅広い領域で社会に貢献し続ける次の100年を創造していきます。 G.A.コンサルタンツは我々にとって欠かす事の出来ない、重要なビジネスパートナーと位置付けております。

企業と人に選ばれる

 岸本鉄工所が外国人雇用を検討し始めたころ、言葉や文化の違い、コミュニケーションの不安、地域住民の理解など様々な心配もありましたが、TRONGさん達の学ぶ姿勢や仕事ぶりが評価され、何より受入れてみて社員が差別なく接している、まさに企業風土そのもの。
 彼らのハイスピードでの躍進は、後輩たちの成長と定着のロールモデルとなり、更には仕事と人を呼び込んでくる。企業と人に選ばれる会社へと導いていってくれることを願っています。